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企業法務労働災害

会社社員の休職・復職に対するアドバイス

・メンタルヘルス不調で休職している労働者について、職場復帰の可否について意見してほしいと依頼された場合の対応

・復帰先の職場から、当該労働者が復帰すると他の労働者が退職してしまうと相談された場合の対応

いずれの回答も【エビデンスを取って主治医と会社をつなぐのが産業医の仕事】

なかなか会社とうまくコミュニケーションがとれてない【会社と産業医の関係を円滑につなぐのが社労士の仕事】と言えます。

職場復帰の可否判断は、労働者の健康状態だけでなく、主治医とコミュニケーションを行い、当該労働者の職務や、所属長や周囲の同僚の特性などをも踏まえて判断することが必要です。

産業医としての総合力が問われる場面だとも言えます。社労士は、会社と産業医との両方の感覚を理解して橋渡し的な役割を担うのが適切でしょう。

このようなコミュニケーションには時間がかかり、産業医だけではやり切らないことが多いので,社労士が活躍する場面となりうると言えます。

ここで繋げられない社労士は存在意義を問われることになります。反対に、ここでうまく双方の立場を理解して橋渡しがうまくできる社労士はこれから先必要とされる社労士といえます。

もちろん産業医も様々な面に気を配る必要があります。社労士や産業医な働きによって橋渡しが円滑に進んだ際には事業場との信頼関係が構築できます。産業医はもちろん、社労士も積極的に関わっていくとよいでしょう。

メンタルヘルス不調により休業していた労働者の職場復帰

産業医は、主治医の意見や、労働者から得た健康状態に関する情報を参考にして、就業が可能な健康状態か、また、就業に際して必要な措置があれば、その内容について意見します。

その際に産業医は意見するのみで責任も権限もありません。社労士は会社側と産業医との橋渡しをすべきでしょう。

なお、最終的に、職場復帰をさせるかどうかは、産業医でも社労士でもなく、事業者が判断することになります。

メンタルヘルス不調により休業していた労働者の職場復帰については、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に、具体的な手順が示されいます。

基本的な考え方は、メンタルヘルス不調以外での休業にも当てはまります。

手引きにおいては、第1ステップから第5ステップまでが示されており、職場復帰の可否については、第4ステップに「最終的な職場復帰の決定」として、労働者の健康状態の最終確認、産業医からの就業上の配慮等に関する意見の聴取を経て、事業者により最終的な職場復帰を決定するといった手順が示されています。

主治医が職場復帰の可否判断をするという【誤解】

主治医が職場復帰の可否判断をするという【誤解】もあるのですが、主治医は患者-医師関係の中で、本人の健康状態を踏まえて、就労が可能な状態かについての意見を述べることが役割となります。

一般的には、主治医による「就労可能」といった診断書は、本人に対して発行されるものであり、本人が就労可能な状態であることを証明するためのエビデンスとして用います。

患者-医師関係における就労可能の判断については、「主治医による診断書の内容は、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それはただちにその職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らない」、「労働者や家族の希望が含まれている場合もある」と手引きに記載されています。

これは、回復が不十分であるにも関わらず、主治医の意見がそのまま採用されて職場復帰し、短期間で再休業となる労働者が多かったことを踏まえての記載です。

なお「事業者により最終的な職場復帰の決定がなされる」といっても、例えば、社長、工場長、支店長などが全ての休業者に直接的に関わって判断をするということではなく、例えば、職場復帰検討委員会などの会議体を設置し、人事労務、所属長、産業医などがそれぞれの立場で職場復帰についての意見を述べて、合議制で職場復帰の可否判断をするといった仕組みもあり、責任や負担感の分散のためにも有効な取り組みです。

この際には、産業医は、医学的な観点から本人の健康状態を評価し、必要な就業上の配慮について意見することが役割となりますが、人事労務や所属長は、職場復帰に際して期待する業務の決定や、そこに向けての段階的なステップの設定、そして本人に期待される業務に対する職務遂行能力があるかどうかの意見をすることになります。

また、産業医としては、休業していた労働者のみならず、職場環境全体についても考慮しなければなりません。

職場環境全体についても考慮

産業医としては、休業していた労働者のみならず、職場環境全体についても考慮しなければなりません。

例えば、復帰先の職場から『「彼が復帰するなら退職します」と話している社員が数名おり、どうにかならないか』と相談された場合にはどのように対応するのが良いでしょうか。

もし、当該労働者が休復職を繰り返しており、そのたびに、周囲の労働者が業務のフォローをしている状況があれば、職場内の業務負荷がアンバランスになり、二次的に健康問題を生じることになりかねません。

特定の人間関係の問題によって休業に至ったのであれば、健康状態(疾病性)が改善しても、人間関係が改善していなければ、職場復帰後に同様の問題が生じる可能性が高いです。

また、もしかしたらメンタルヘルス不調に対する偏見が存在しているかもしれず、その場合にはハラスメントとして問題が顕在化するかもしれません。

したがって、職場復帰をする際や、その他、労働者の健康問題に対応する際には、疾病性の観点だけではなく、事例性や職場環境の観点からも状況を評価して、対応を検討する必要があります。

つまり、疾病性が生じた要因についても評価し、その要因への対処法についても事業者と協議することが重要です。

これは、医師-患者関係に基づき診断・治療を行っている外部医療機関の主治医には対応が難しい課題であり、職場環境改善といった視点で産業医が担うことが記載される役割になります。

上記の例で考えると、まずはどういった経緯で周囲の労働者が不満を抱えているかを聴取(必ずしも産業医が直接聴取する必要はありません)します。

その上で、職場復帰するに当たって、受け入れ予定職場の管理監督者を含めて、本人の状態やメンタルヘルス不調に至った経緯(本人にも職場にどのように説明するかについて、同意を得てください)について理解を求め、円滑な職場復帰に向けてできる支援をしてもらう、受け入れに際して本人に必要な取り組みをしてもらう、当該職場には受け入れが困難だと判断して、他職場での受け入れを検討する、などの対応が考えられます。

職場においては、メンタルヘルス不調(それ以外の健康問題でも同様です)が改善したので職場復帰する、といった単純な対応ではなく、様々な立場から、不調に至った経緯を踏まえた対応が重要です。

04/19
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